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2010年3月25日 (木)

公認会計士試験の二段階化に筋道、大手監査法人が支持表明

 金融庁の公認会計士制度に関する懇談会の第4回が3月24日に開催された。これまでさまざまな立場の委員がさまざまな意見を述べ、今年6月の報告書提出を心配する声も聞かれたが、第4回になり、方向性が固まってきたようだ。それはこれまでにも浮上していた公認会計士資格の二段階化だ。

 第1回:会議は踊る――会計士試験見直しで議論百出
 第2回:注目集める公認会計士制度の新試験案、議論の収れんは
 第3回:産業界が望む公認会計士資格の二段階化、その実現性は

 第4回では4大監査法人のトップが出席し、今後の公認会計士試験制度についての意見を述べた。金融庁の事務局から事前に“宿題”を与えられていて、出席者らはそれぞれ二段階化についての考えを用意していた。二段階化とは公認会計士資格を2つに分ける考え。最初の試験の合格者にも「准会計士」などの資格を与えて、企業に就職しやすくする。監査業務に就きたい合格者は監査法人に就職し、実務補習などを行い、最終的な資格取得を目指す。これによって高度な会計知識を持つ者が企業で働くようになり、同時に公認会計士試験合格者の就職難問題も解決できる、としている。

 結果的には出席した、あずさ監査法人、あらた監査法人、新日本有限責任監査法人、有限責任監査法人トーマツのうち、あずさ監査法人以外の3つの監査法人が二段階化に対して前向きな姿勢を示した。あずさ監査法人も反対はしていない。

●会計資格の「共通一次」

 あらた監査法人の代表執行役 初川浩司氏は二段階のうちの第1段階の試験として「会計プロフェッション専門知識検定試験」を設けることを提案した。この検定試験の合格者は監査法人や一般企業に就職し、3年程度の実務経験を積んだ後に、「会計プロフェッション国家試験」を受験。合格し、実務補習を修了すると公認会計士資格が付与される。実際に監査業務を行うにはさらに追加の実務経験を要求(監査業務の未経験者のみ)し、最終的に「公認会計士開業登録審査」をパスすると監査業務を行える。3年程度の実務経験は検定試験の前後どちらでもいいようにし、社会人の受験者も呼び込む。検定試験は「いわば共通一次」(同氏)の意味を持ち、ほかの会計系資格との連携も可能にする。

 新日本の経営専務理事 荒尾泰則氏は、「資格を二系統パラレルにすることには否定的」としながらも「旧制度の会計士補のように一系統二段階とする可能性はある」と発言。そのうえで、会計士資格に対して「サーティフィケート」と「ライセンス」を設けることを提案した。監査法人に就職せず、監査の実務経験がない試験合格者や、監査実務を行う考えがない試験合格者に対してはサーティフィケートの資格を与える。一方、監査実務を行い、一定年数の実務経験を積んだ試験合格者に対しては「ライセンス」を与える。ただ、「短答式試験合格者を一定の資格として認めるのは不適切」として、サーティフィケート、ライセンスともに論文式試験の合格を必須としている。

 トーマツの包括代表・CEOの佐藤良二氏は会計コンバージェンスやIFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)の適用で「2000年以降、会計が難しくなった」と指摘した。企業内で効率的に会計業務を回すには「会計プロフェッショナルの増加が必要」といい、その供給源として「二段階の試験は検討に値する」と話した。そのうえで「准会計士」や「会計プロフェッション資格」などの名称を提言し、「実務能力や実践的な能力を判定、認定的な試験」と説明した。ただ「試験のレベル、内容は設計見直しが必要」(同氏)で、現行の試験制度との共通化や連続性が重要とも話した。

●困難な試験制度設計

 これらの二段階化の考えについては住友商事の特別顧問 島崎憲明氏が「産業界からも申し上げている」と支持を表明した。米国公認会計士資格が国内で一定の評価を得ていることを説明し、「日本の二段階資格についても、この資格を持っていればこういうレベルの会計人材だと評価されるようになるだろう」と話した。

 一系統二段階の資格制度について懇談会では大きな反対はないようだ。ただ、実際の制度設計は困難が予想される。試験の内容やレベルのほかに、現行の試験と連動させる場合、短答式試験合格後、論文式試験合格後など、どの段階で第1段階の資格を与えるかも難しい。最終的な公認会計士資格取得までのプロセスなど国際的な動向を見ながら決める必要があるだろう。

 委員で青山学院大学大学院の教授 八田進二氏は「一般企業に勤められる年齢、状況の人はそこに行ってから視野を広げ、それから監査業務を行っても遅くない。そのため資格は若い段階で取れるようにするのがいい」として資格の二段階化に理解を示した。ただ、「全世界で会計士と名の付く人が監査業務を担っていない国はない。少なくとも国際社会で認められるには前段階資格の名称や一定の学力を明確にすべき。私は(前段階資格の付与条件は)短答式試験合格とは認識していない」として、「信頼性のある試験の中身を考えてもらいたい」と注文を付けた。

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